大規模修繕の発注の流れ: 戸建てと違い、決めるのは管理組合
国土交通省のマンション改修マニュアルは、全面的な外壁塗装などを伴い、修繕積立金を充てて行う計画的な修繕を大規模修繕と呼び、通常は12〜15年程度の周期で実施されるとしています。準備から工事の完成までは、一般に3〜5年程度かかる長期の取組と書かれています。
| 段階 | マニュアルが示す内容 |
|---|---|
| 検討組織の設置 | 理事会だけでは知識と時間に限りがあるため、理事会の諮問機関として修繕委員会などの専門委員会を置くことが望まれる。設置は総会の普通決議(出席した区分所有者と議決権の各過半数)で決める |
| 専門家の選定 | 調査診断や設計を担う者と施工者を分ける設計監理方式と、一者に任せる責任施工方式(設計施工一括方式)がある。専門家は管理組合のパートナーで、意思決定の主体は管理組合 |
| 見積依頼・施工会社の募集 | 見積を頼む会社を推薦または公募で選ぶ。公正さと透明性のためには公募が望ましい |
| 発注先の選定と決議 | 見積書の内容・単価・金額をチェックし、能力や体制をヒアリングで確かめて候補を決める。改修実施に係る決議の成立を受けて、施工業者を決定し契約する |
出典: 国土交通省「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)の本文(確認日 2026-10-14)。決議ごとの賛成の割合は、工事の内容や管理規約で変わるため、このページでは扱いません。
マンションの見積の見方: 共通の条件で出させ、内容を比べる
マニュアルは、見積を共通の条件で行うため、管理組合が見積を依頼する会社に次の資料を示す必要があるとしています。
| 提示する資料 | 書かれる内容 |
|---|---|
| 改修工事設計図 | 改修する範囲 |
| 改修工事仕様書 | 足場仮設の方法、下地処理の方法、仕上げ材料の種類・量・塗布方法など |
| 数量内訳書 | 工事対象量 |
| その他の条件 | 工事の期間、工事金の支払方法、監督・検査の方法など |
集まった見積書については、次の点が書かれています。
- 個々の見積内容、単価、金額をチェックし、金額に大きな差があるときは、その理由を確認する。
- 著しく低い価格の業者には、施工品質や工期が適切に担保されているか、積算の前提条件を十分に確認する。
- 見積を比べる見積合わせ方式では、総額の大小だけでなく見積内容を比較して決める。
- 特定の1者の見積で決める特命随意契約は、見積金額の適正性を判断しにくく、発注者に専門知識がないと評価が難しくなりうる。
- 第三者のサポートとして、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの見積チェックサービス(契約前の見積書の確認)や、地域によっては地方住宅供給公社などの発注支援が挙げられている。
出典: 国土交通省「マンション改修マニュアル」(令和8年3月改訂)の「見積依頼・施工会社の募集と候補者選定」(確認日 2026-10-14)。
戸建ての見積との違い
上の資料から読み取れる違いを、このサイトの整理として並べます。
| 観点 | マンション(管理組合) | 戸建て |
|---|---|---|
| 発注する人 | 管理組合(区分所有者全員で構成)。理事会・修繕委員会・総会を経る | 所有者本人 |
| 見積の条件 | 管理組合が設計図・仕様書・数量内訳書を示し、複数社に同じ条件で依頼する | 業者ごとに現地調査をして見積が出ることが多い |
| 比べ方 | 総額だけでなく内容を比較し、差の理由を確認する | 同じく項目をそろえて比べる(複数社の見積を同じ条件で比べる項目表) |
| 専門家の関わり | 設計監理方式などで専門家が仕様や見積のチェックを支援できる | 所有者が単独で確かめることが多い |
戸建てとマンションで労務単価をどう使い分けるかは戸建てとマンション大規模修繕の見積での労務単価の地域差の使い分けにまとめています。区分所有者ではなくオーナーが一棟を持つ賃貸アパートの場合は、賃貸アパート・貸家の外壁塗装の見積と国交省の2事例を参照してください。
労務単価で言えること・言えないこと
言えるのは、塗装工の日額が都道府県ごとの賃金水準の物差しになることです。お住まいの県の日額と全国単純平均との比は47都道府県の塗装工日額 一覧で確認できます。
言えないのは、大規模修繕の見積の総額の高低です。マニュアルには労務単価の記述が確認できず、大規模修繕の見積を労務単価の地域差で評価する方法は、このサイトでは確認できませんでした。大規模修繕には足場、防水、シーリングなど塗装以外の工種や仮設が含まれ、塗装工の日額に含まれるものの範囲は塗装工日額に含まれるもの・含まれないものにあります。
このページでできないこと
個別の大規模修繕の見積が適正かどうかの判定、総会決議の要件の個別判断、施工会社や設計コンサルタントの紹介はできません。国の標準歩掛りが公的に存在しないため、日額から1平方メートルあたりの単価も出しません。契約や勧誘で困ったときの公的な窓口は見積に迷ったときの公的な相談窓口にまとめています。
よくある質問
マンションの外壁塗装は、管理組合の総会で決める必要がありますか
国土交通省のマンション改修マニュアルは、改修の意思決定の主体は管理組合であるとし、改修実施に係る決議を経て施工会社を決定し契約する流れを示しています。決議の種類や賛成の割合は、工事の内容や管理規約で変わるため、このページでは判断しません。管理規約と管理会社・専門家に確かめます。
マンションの大規模修繕の見積を、戸建ての見積と同じ見方で比べてよいですか
同じ見方では足りません。マニュアルは、管理組合が設計図・仕様書・数量内訳書などの共通の資料を示して複数社に見積を求め、総額の大小だけでなく内容を比較するとしています。金額に大きな差があれば理由を確認し、著しく低い価格の業者には施工品質や工期の担保を確かめるとも書かれています。
マンションの大規模修繕の見積を、労務単価の地域差で評価できますか
評価できるとは言えません。マニュアルには労務単価の記述が確認できませんでした。塗装工の日額は地域の賃金水準の物差しですが、大規模修繕の総額には足場、防水、シーリングなど塗装以外の工種や仮設も含まれ、日額だけで総額の高低は決められません。
