「シリコン」「フッ素」「無機」は何の区分か
見積書の塗料欄にある「シリコン」「フッ素」「無機」は、塗料の種類やグレードを示す呼び方です。国の資料で確かめられたのは、上塗り塗料を樹脂の種類で区分する考え方です。国土技術政策総合研究所の資料は、外装仕上塗材の上塗りの樹脂を、耐候形の種別とあわせて次のように整理しています。
| 資料での樹脂の区分 | 耐候形の種別 | 樹脂の係数(O2) |
|---|---|---|
| アクリル系 | (記載なし) | 0.6 |
| ウレタン系 | 耐候形3種 | 1.0 |
| アクリルシリコン系 | 耐候形2種 | 1.4 |
| ふっ素系 | 耐候形1種 | 2.0 |
係数は、同じ条件で比べたときの序列を示す数字で、年数ではありません。外装仕上塗材(吹付けやローラーで仕上げる塗材)の資料なので、見積の塗料の年数をこの係数から決めることはできません。出典: 国土技術政策総合研究所の資料(PDF)(確認日 2026-10-12)。
国土交通省官庁営繕部の公共建築工事標準仕様書も、コンクリート面などの耐候性塗料塗りの表(表18.7.3)で、A種は「ふっ素樹脂塗料用中塗り」、B種は「アクリルシリコン樹脂塗料用中塗り」と、樹脂の名前で種別を分けています。複層仕上塗材の上塗材の表(表15.5.2)では、樹脂(アクリル系・シリカ系・ポリウレタン系・アクリルシリコン系・ふっ素系)と、溶媒(溶剤系・弱溶剤系・水系)、つやの有無を組み合わせて選ぶ形です。出典: 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版」15章・18章(確認日 2026-10-12)。
この2つの資料には、上塗りの樹脂の区分としての「無機」は見当たりませんでした。見積に「無機塗料」とあるときは、国の資料で決まった区分ではなく、製品を出すメーカーの呼び方である可能性があります。何を指しているかは、製品名とメーカーの資料で確かめます。また、見積の「シリコン」が資料の「アクリルシリコン系」にあたるかも、見積の文字だけでは決まりません。
契約前に業者へ確かめる点
| 確かめる点 | 見積書・契約書面で見る所 | 業者に聞くこと |
|---|---|---|
| 製品名とメーカー | 「シリコン」などの区分名だけでなく、製品名・メーカー名があるか | どの製品か。製品の資料(カタログ・仕様書)を見せてもらえるか |
| 区分名の中身 | 「シリコン」「フッ素」「無機」と書かれた塗料が、下塗り・中塗り・上塗りのどれか | その呼び方は、樹脂の種類を指すのか、メーカーの商品名の区分か |
| 耐用年数の根拠 | 「◯年」と書かれている場合、その年数の出どころ | メーカー資料の年数か、業者の経験か。立地や下地で変わるか。書面で残せるか |
| 塗り回数 | 下塗り・中塗り・上塗りが別の行か、同じ製品を何回塗るか | メーカーが示す塗り回数・工程と同じか |
| 溶媒と仕上がり | 水系・弱溶剤系・溶剤系、つやの有無 | 選んだ理由。住宅の周囲への配慮が要るか |
| 使用量 | 塗料の使用量や缶数の記載 | メーカーが示す使用量(㎡あたり)に沿って塗るか |
耐用年数の公的な資料の有無は外壁塗装の塗り替え時期の目安と公的資料に、塗り回数と製品名の書き方は見積書の塗り回数・塗料名の確認項目にまとめています。遮熱をうたう塗料は遮熱塗料・断熱塗料の見積で確かめる点を見てください。
「低汚染」「光触媒」など機能名が塗料欄にあるとき
塗料欄に「低汚染」「光触媒」のような機能名が書かれている場合も、区分名と同じく、何を根拠にそう呼んでいるかを確かめます。確かめた範囲は次のとおりです。
- 光触媒: 光触媒工業会は、性能と利用方法が適切と認めた光触媒製品に「PIAJ製品認証」を与える制度を設けています。判定基準は、たとえばセルフクリーニング(紫外線)で、JIS R 1703-1の限界接触角が30°以下とされています。ただしPIAJマークは「光触媒の発現する性能と安全性を認めた証であり、光触媒以外の性能や安全性を保証するものではありません」と同工業会は述べています。出典: 光触媒工業会「PIAJ製品認証について」、同「認証機能と性能判定基準」(確認日 2026-10-14)
- 低汚染: 建築用耐候性上塗り塗料のJIS K 5658(2010年改正)の公開されている表紙・目次の範囲に「汚染」の語は見当たらず、「低汚染」を定義する国の資料や業界団体の基準は、確かめた範囲では見つかりませんでした。出典: 日本規格協会 JIS K 5658 プレビュー(確認日 2026-10-14)。規格の本文全体は確かめていないため、「規格にない」とは言えません
見積書に機能名があるときは、次の3点を業者に聞けます。1つ目は、製品名とメーカー名。2つ目は、その機能の根拠(メーカーの試験結果、認証マークの有無、試験の方法)の資料。3つ目は、その機能を保証する書面があるか、効果がどの条件で出るかです。機能名だけでは、他の塗料と比べる材料になりません。
見積を受け取ったあとの使い方
- 見積の塗料欄を書き写し、区分名だけの行に印をつけます。
- 印をつけた行について、製品名・メーカー・下塗り中塗り上塗りのどれかを、業者に聞きます。
- 年数が書かれていれば、根拠の資料を聞き、答えを書面かメッセージで残します。
- 複数の業者の見積を並べるときは、区分名ではなく製品名と塗り回数をそろえて比べます。並べ方は相見積もりの比べ方にあります。
このページでできないこと
塗料のグレードの優劣や価格、見積の塗料が適正かどうかの判定はしません。メーカー資料にしかない年数や性能は載せていません。契約前の質問全体は契約前に業者へ聞く質問リストにあります。
よくある質問
外壁塗装の見積のシリコンとフッ素は、国が決めた等級ですか
国の資料で確かめられたのは、上塗りの樹脂を、アクリル系・ウレタン系・アクリルシリコン系・ふっ素系のように区分する考え方と、耐候形の種別(3種・2種・1種)です。見積の「シリコン」「フッ素」という書き方が、これらにそのまま対応するかは、見積の文字だけでは決まりません。製品名とメーカーを業者に聞いて確かめます。
「無機塗料」は国の資料に出てきますか
このページで確かめた国土技術政策総合研究所の資料と公共建築工事標準仕様書には、上塗りの樹脂の区分としての「無機」は見当たりませんでした。見積に書かれているときは、製品名とメーカーの資料で、何を指す呼び方かを確かめます。
グレードが上の塗料ほど、塗り回数は少なくてよいのですか
このページでは確かめていません。塗り回数は、使う製品のメーカーが示す工程で決まります。見積の回数がメーカーの示す工程と同じかを、業者に聞けます。
見積に「低汚染」「光触媒」と書かれているときは、何を確かめればよいですか
製品名とメーカー名、その機能の根拠の資料、効果が出る条件を業者に聞きます。光触媒は光触媒工業会のPIAJ製品認証があり、認証は光触媒の性能と安全性についてのものです。低汚染を定義する国の資料は、確かめた範囲では見つかりませんでした。
