「標準労務費」という名前の数値表はありません
国土交通省の公表資料に「標準労務費」という名前の数値表はありません。中央建設業審議会が令和7年12月2日に決定・勧告した資料の名前は「労務費に関する基準」で、本文にも建設業法の条文にも「標準労務費」という語は見つかりませんでした(確認日 2026-10-21、本文と建設業法本則の全条文を検索)。ふだん「標準労務費」と呼ばれているのは、この基準にもとづいて国土交通省が職種分野別・都道府県別に公表している「労務費の基準値」を指すことが多いと考えられます。
基準の概要と、見積の内訳明示・値引き交渉の扱いは公共工事設計労務単価と民間の外壁塗装見積の違いにまとめています。このページでは、基準値の対象に塗装が入っているかを扱います。
基準値の職種分野に塗装が追加された経緯(令和8年3月31日)
国土交通省の「労務費に関する基準ポータルサイト」の新着情報(2026年3月31日)に、次の記載があります。
- 新たに「とび・土工」「計装」「塗装」「内装」「板金・屋根ふき」「解体」「防水」「さく岩」「タイル・サッシ・ガラス」「エクステリア」「上下水道」の11職種分野で34工種(作業)の「労務費の基準値」を追加した
- すべての基準値を、令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価に対応した値に更新した
ポータルサイトの「職種分野から探す」でも、選べる職種分野の一覧に「塗装」があります。2026年6月17日には、労務歩掛の出典を各基準書等としている基準値が、令和8年度版に対応した値に更新されています。出典: 国土交通省「労務費に関する基準ポータルサイト」の新着情報(2026年3月31日)・同(2026年6月17日)・職種分野から探す(確認日 2026-10-21)。
基準値とは何の数値か
中央建設業審議会決定の基準本文は、基準値を次のように位置づけています。
| 項目 | 基準本文に書かれていること |
|---|---|
| 何の数値か | 職種分野別・都道府県別に、標準的な作業内容・施工条件を前提とした適正な労務費を、トンあたり・平米あたりなどの「単位施工量当たり労務費」の形で示す |
| 計算式 | 労務単価(円/人日)×歩掛(人日/単位施工量)。労務単価には、工事の施工場所が属する都道府県の公共工事設計労務単価を当てはめる |
| 個別の契約への当てはめ | 個別の請負契約にそのまま適用できる値を定める趣旨ではなく、具体の作業内容や施工条件を踏まえて基準値を補正して労務費を算出する |
| 含まれない費用 | 法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建設業退職金共済制度の掛金は労務費に含まれず、別に内訳を示して計上する |
出典: 中央建設業審議会決定「労務費に関する基準」(令和7年12月2日)の本文PDF、第2章(2)職種分野別の基準値(確認日 2026-10-21)。上の表は、読みやすいように言い換えて整理したものです。
つまり基準値は、都道府県ごとに違う公共工事設計労務単価に、作業量あたりの歩掛を掛けた値です。地域によって値が違う点は、このサイトの都道府県別の塗装工日額(47都道府県の塗装工日額 一覧)と同じ労務単価が土台になっています。
確認できなかったこと
- 塗装の職種分野に含まれる工種(作業)の名前と、外壁塗装にあたる工種の具体的な基準値。ポータルサイトで都道府県と工種を選んで表示する仕組みで、このページを書いた時点の取得では数値を読み取れていません。そのため、塗装の基準値の数値は転記しません。
- 塗装の基準値に使われている歩掛の出典。基準本文は、国土交通省直轄工事の歩掛を使うこと、直轄工事に適切な歩掛がなければ公的機関の歩掛を使うこと、戸建住宅は歩掛調査の結果を使うことを定めていますが、塗装の各工種でどれを使っているかは確かめられていません。
数値を確かめたいときは、ポータルサイトの職種分野から探すで「塗装」と、工事を行う都道府県を選ぶと、国が公表している基準値を直接見られます。
見積を受け取った施主は、基準値をどう扱うか
- 基準値は国が示す参考の水準で、受け取った見積の労務費が基準値と同じか上か下かだけで、見積の良し悪しや契約の可否は決まりません。基準本文も、受注者が通常より高い労務費を必要とする場合には、割り増して見積り、双方が誠実に価格交渉を行うことを想定しています。
- 国土交通省の「労務費に関する基準」の運用方針は、発注者が個人の場合に見積が予算に合わないときの対応として、設計・仕様を見直して再度見積りを取ること、適正な労務費は確保した上でより生産性高く施工できる受注者に見積りを依頼すること、発注時期を見直すことを挙げています(ポータルサイトのよくあるご質問)。労務費だけを削る形の交渉は想定されていません。
- 見積の内訳に労務費が書かれていないときは、材料費等記載見積書を請求できます(建設業法第20条第4項)。内訳の項目ごとの見方は外壁塗装の見積書の内訳の見方で確認できます。
お住まいの県で、労務単価がどのあたりの水準かを見るには、地域係数を調べるページが入口になります。見積総額を全国単純平均の水準にそろえた参考の値にする手順は見積総額の引き直し計算例にあります。
業者に聞くときの文例(労務費の内訳の出し方)
見積に労務費が一式でしか書かれていないときは、次のように聞くと、内訳の根拠を確かめられます。基準値と同じかどうかを問いただす聞き方ではなく、内訳を出してもらう聞き方にしています。
- 「労務費にあたる部分を、材料費や足場代と分けて書いた内訳をいただけますか」
- 「労務費は、何人で何日の作業を見込んだ金額ですか。工程ごとの日数も教えてください」
- 「法定福利費や安全衛生経費は、労務費に含まれていますか。別に計上されていますか」
- 「お住まいの県の労務単価をもとに積算していますか。もとにした数値があれば教えてください」
内訳が出てきたら、外壁塗装の見積書の内訳の見方と見比べます。回答の良し悪しはこのページでは判定しません。
標準労務費と外壁塗装についてよくある質問
標準労務費の一覧表は、どこで見られますか
「標準労務費」という名前の表はありません。国土交通省の「労務費に関する基準ポータルサイト」の「職種分野から探す」で、職種分野と都道府県を選ぶと「労務費の基準値」を見られます。
基準値に塗装は入っていますか
入っています。2026年3月31日の新着情報に、塗装を含む11職種分野の基準値を追加したと書かれています。
見積の労務費が基準値より低いと、手抜きということですか
そうとは言えません。基準値は個別の契約にそのまま適用する値ではなく、具体の作業内容や施工条件を踏まえて補正して使うものだと基準本文が定めています。このサイトは、見積が基準値を下回るかどうかの判断はしません。
次に確認するページ
このページでできないこと
本サイトは都道府県別の労務単価だけを扱い、歩掛は扱いません。基準値の数値を転記しないこと、基準値を㎡単価に換算した比較をしないことはそのためです。個別の見積の適正・不適正や、見積が基準値を下回るかどうかの判断はしません。塗装業者の紹介・あっせんもしません。
