労務費に関する基準と外壁塗装の見積(値引き交渉・内訳明示の扱い)

令和7年12月2日に中央建設業審議会が作成・勧告した「労務費に関する基準」と、改正された建設業法第20条が、外壁塗装の見積を受け取った個人の施主に何を求め、何を禁じていないかを、国土交通省の運用方針と条文で確認できます。

労務費に関する基準の概要

基準では、通常必要と認められる労務費を「作業に対応する職種の公共工事設計労務単価 × 施工条件・作業内容等に応じた歩掛 × 施工数量」で計算した額と位置づけています。このうち公共工事設計労務単価は都道府県ごとに値が違い、塗装工の日額は都道府県別一覧で確認できます。

ここでいう労務費は、公共工事設計労務単価と同じく技能者の賃金相当分(法定福利費の個人負担分を含む)だけを指します。法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建設業退職金共済制度の掛金は含まれず、労務費とは別に内訳を示して計上されるべきものとされています。

公的な歩掛が把握されていない戸建住宅については、国土交通省が歩掛調査を実施し、その結果を活用するとされています。職種分野ごとの基準値は、国土交通省の「労務費に関する基準ポータルサイト」で確認できます。

出典: 国土交通省「労務費に関する基準」(mlit.go.jp)、中央建設業審議会決定「労務費に関する基準」本文(PDF)、国土交通省「労務費に関する基準の運用方針」令和8年6月最終改正(PDF)、いずれも確認日2026-09-27

建設業法第20条で見積について決まっていること

条文誰に内容
第1項建設業者材料費・労務費などの内訳を書いた見積書(材料費等記載見積書)を作るよう努める
第2項建設業者見積書に書く材料費等の額は、通常必要と認められる額を著しく下回ってはならない
第4項注文者材料費等記載見積書の内容を考慮するよう努める
第4項建設業者注文者から請求があれば、契約が成立するまでに材料費等記載見積書を渡さなければならない
第6項注文者材料費等の額を、通常必要と認められる額を著しく下回るような変更を求めてはならない
第7項発注者第6項に違反し、変更後の見積書で契約した場合(政令で定める金額以上の工事)、適正な施工の確保のため特に必要があると認めるときは、建設業者の許可をした国土交通大臣または都道府県知事が発注者に勧告できる

出典: 建設業法第20条(e-Gov法令検索、確認日2026-09-27)

個人の施主について運用方針が示していること

値引きの交渉そのものは禁止されていない

運用方針(方針38)は、見積書の労務費等が基準の想定する適正な水準より根拠なく著しく高いなど、妥当でないと考えられる場合には、価格交渉を行うこと自体は禁止されないとしています。禁じられているのは、第20条第6項のとおり、労務費を含む材料費等を通常必要な額より著しく下回らせるような変更を求めることです。

予算に合わなければ契約しなくてよい

方針39は、見積書が予算に合わないと判断した場合に契約しないこと自体は差し支えないとしています。あわせて、相見積りを取るときは材料費等記載見積書の請求なども使いながら、労務費を削る形の不適切な価格競争にならないようにすることを求めています。

内訳を見たいときは請求できる

第20条第4項により、注文者が請求すれば、建設業者は契約成立までに材料費等記載見積書を渡さなければなりません。方針53は、個人の発注者が相手でも、価格交渉で労務費等を確保する必要がある場合には内訳を示すことが望ましいとしています。内訳は、請負代金の総額の中の労務費として示されていれば足り、工程ごとに分けることは必須ではありません(方針51)。

見積書の保存と勧告・公表

建設業者は、当初と最終の見積書を引渡しから10年間保存する義務があります(建設業法第40条の3と同法施行規則。方針9)。個人など建設業者でない発注者には保存の義務は課されませんが、労務費等を必要額より著しく下回らせるような見積りの変更を頼んだ場合には、許可行政庁が勧告・公表を行うことがあり得るとされています(方針9)。

都道府県別の労務単価と合わせて確かめること

基準の計算式の起点は公共工事設計労務単価なので、見積の労務費を読むときは、工事をする都道府県の塗装工の日額が出発点になります。自分の都道府県の日額と全国単純平均との差は地域係数を調べるページで、令和8年3月の改定内容は公共工事設計労務単価 令和8年3月改定で確認できます。

このページでできないこと

本サイトは都道府県別の労務単価だけを扱い、歩掛は扱わないため、㎡単価への換算や、見積の労務費が基準を下回るかどうかの計算を行いません。個別の見積の適正・不適正や、個別の取引が建設業法に違反するかどうかの判断もしません。個別の取引について確かめたいときは、上に示した条文と運用方針の原文をご確認ください。