塗料をうすめる量を決める製造所の指定
缶に入った塗料は、水やうすめ液(シンナー)を加えて塗りやすい濃さにしてから塗ることがあります。これを希釈(うすめること)といいます。うすめる量は、業者の感覚で決めるものではなく、製造所(メーカー)が製品ごとに指定します。見積の缶数や塗布量は、この指定を前提に読みます。
下塗りと中塗り・上塗りの工程の読み方は見積書の塗り回数・塗料名の確認項目にあります。このページは、その次の問いとして、缶数と塗布量とうすめる量の関係を扱います。
公共工事の仕様書は、うすめる量をどう書いているか
国土交通省官庁営繕部の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版は、吹付けやローラーで塗る仕上塗材の工法で、練混ぜに使う水やうすめ液の量を次のように書いています。
- 練混ぜは、仕上塗材の製造所の指定する水の量で均一になるように行う。溶剤系の下塗材の場合は、製造所の指定する量の専用薄め液で行う(15.6.6(1)(ア))
- 所要量は、被仕上塗材仕上げ面の単位面積当たりの仕上塗材(希釈する前)の使用質量とし、製造所の指定による。2回塗りの場合は、2回分の使用質量を示す(仕上塗材の所要量の表の注5)
ここから読み取れるのは、次の2点です。うすめる量は「製造所の指定する量」で、国が割合の数字を一律に決めているわけではありません。また、所要量は水やうすめ液を足す前の塗料の質量で数えます。うすめて増えた分を使用量に含めると、缶数の数え方がずれます。
この仕様書は国の官庁施設の工事の基準で、民間の住宅の塗り替え見積に適用されるものではありません。また、上の定めは仕上塗材の章のもので、塗装工事の章の塗料に同じ定めがあるとは、このページでは確かめていません。見積の読み方の参考として使います。出典: 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」15章 左官工事のうち仕上塗材仕上げ(確認日 2026-10-15)。
メーカーの製品情報にある、うすめる液と標準塗坪
メーカーの製品ページにも、うすめる液の種類と、缶1つで塗れる面積の目安(標準塗坪)が載っています。一例として、エスケー化研「水性セラミシリコン」の製品仕様を挙げます。
| 項目 | 製品ページの記載 |
|---|---|
| 希釈(うすめる液) | 清水(水) |
| 荷姿 | 16kg石油缶、4kg缶 |
| 標準塗坪 | 45〜64㎡/16kg缶、11〜16㎡/4kg缶 |
| 備考 | 標準塗坪は一般的なもので、下地の状態や環境などによる所要量の増減に応じて変わることがある |
この例では、標準塗坪にも幅があり、メーカー自身が下地や環境で変わると書いています。缶数から塗布量を逆算するときも、1つの数字で決まるわけではありません。ほかのメーカー・製品では、うすめる液の種類や標準塗坪が異なります。出典: エスケー化研「水性セラミシリコン」製品情報(確認日 2026-10-15)。うすめる割合の数字は、この製品ページの記載には出ていないため、製品ごとの施工仕様書で確かめるものです。
契約前に業者へ確かめる3項目
| 確かめる項目 | 見積書・契約書面で見る所 | 業者に聞くこと |
|---|---|---|
| 1. うすめる液と割合の指定 | 塗料の製品名とメーカー名 | その製品の施工仕様書にある、うすめる液の種類と割合の範囲。当日どの割合で使うか |
| 2. 缶数と塗布量の根拠 | 缶数、または面積あたりの使用量の記載 | 缶数はメーカーの標準塗坪から出したか。下地の状態で増減する前提か |
| 3. 使用量の数え方 | うすめる前の塗料の量で数えているか | 使い終わった缶を数える・写真に残す方法があるか |
缶数の記録の残し方は工事中の写真と施工記録に、見積の塗装面積の根拠は見積書の塗装面積の根拠にあります。塗料の種類名の見方は塗料グレード表記を契約前に確かめる点にあります。
このページでできないこと
うすめる割合が適切かどうか、見積の缶数や塗布量が適正かどうかの判定はしません。缶数から1㎡あたりの単価への換算もしません。お住まいの県の日額と参考値は都道府県別の塗装工日額ページの一覧から確認できます。
よくある質問
塗料をうすめる割合は、国の基準で決まっていますか
公共建築工事標準仕様書(令和7年版)の仕上塗材の工法では、練混ぜに使う水やうすめ液の量を「仕上塗材の製造所の指定する量」としています。割合そのものを国が一律に定めているのではなく、製品ごとの製造所の指定に従う形です。住宅の塗り替えに適用される基準ではないため、参考として読みます。
見積の缶数が、メーカーの標準塗坪と合わないときは問題ですか
合わないだけでは問題と断定できません。メーカーの標準塗坪は一般的な値で、下地の状態や環境で所要量が増減するとメーカー自身が記しています。缶数が標準塗坪から離れているときは、何に基づく数量かを業者に聞く材料にします。
うすめる量が多いと、缶数は減りますか
仕様書の所要量は「希釈する前」の使用質量で示されるため、うすめた後の量ではなく、缶から出した塗料の量で数えます。うすめる量の違いは、缶数の数え方と塗膜の仕上がりの両方に関わるため、製造所の指定の範囲で行うかを契約前に業者へ確かめます。
