鉛が問題になるのは古い塗膜を落とすとき
鉛は、以前は錆止めなどの塗料に使われていたことがある金属です。塗膜に含まれていても、塗膜がそのまま付いている間は粉として飛びません。問題になるのは、ケレン(古い塗膜や錆を削り落とす下地処理)などで塗膜を削り、鉛を含む粉じんが出るときです。
厚生労働省の通知(平成26年)は、一般に錆止めなどの目的で鉛を数十%から十数%程度含む塗料が塗られた橋梁などの建設物があり、業界の自主的な取組で鉛を含む塗料の流通は少なくなったものの、現在でも多くの建設物に塗られていると書いています。
この通知が名指ししている対象は「橋梁等建設物」です。住宅の鉄部を名指しした記載は、確認した範囲にありませんでした。ただし、通知は塗料の剥離やかき落とし作業を行う場合の一般的な対応を示しており、配布先の団体には日本塗装工業会と住宅生産団体連合会も含まれています。このページは、住宅の鉄部・付帯部の旧塗膜が鉛を含む場合に、同じ考え方で業者に確かめられる点を整理したものです。
出典: 厚生労働省「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」(平成26年5月30日、基安労発0530第1号・基安化発0530第1号)(確認日 2026-10-14)。
法令が求めていること(鉛中毒予防規則)
| 項目 | 条文が定めていること | 条 |
|---|---|---|
| 落とし方 | 含鉛塗料を塗布した物の含鉛塗料のかき落としの業務は、著しく困難な場合を除き、湿式で行う | 鉛則第40条第1項第1号 |
| 落とした塗膜 | かき落とした含鉛塗料は、速やかに取り除く | 鉛則第40条第1項第2号 |
| 請負人に任せるとき | 湿式で行う必要があること、かき落とした含鉛塗料を速やかに取り除く必要があることを、請負人に周知させる | 鉛則第40条第2項・第3項 |
| 湿式でないとき | 湿式以外の方法でかき落とす業務には、有効な呼吸用保護具を使用させる | 鉛則第58条第3項第2号 |
出典: e-Gov法令検索「鉛中毒予防規則」第40条・第58条(確認日 2026-10-14)。
条文の義務の主語は「事業者」で、労働者を従事させるときの措置として書かれています。個々の塗装業者がこの規則の対象になるかは、このページでは判定しません。
「湿式」と「著しく困難な場合」
鉛中毒予防規則の施行通達(昭和42年)は、含鉛塗料のかき落としを、きさげ、ワイヤブラシ、グラインダ、サンドブラストなどを使って含鉛塗料を落とすことと説明しています。ワイヤブラシなど、鉄部のケレンで使う道具も例に入っています。
同じ通達は、「湿式」を、かき落とし面を方法を問わず十分に湿らせて行うことと説明しています。「著しく困難な場合」の例には、サンドブラスト工法を使う場合と、塗られている面が鉄製で、湿らせると錆が出る場合などが挙げられています。鉄部は後者に当たりうるため、鉛が含まれるときの落とし方は、業者に具体的に聞く価値があります。
なお、この通達が書かれた当時の条番号は現在と違い、湿式の規定は第33条として説明されています。内容は現在の第40条に当たる規定の説明として読みました。
出典: 厚生労働省「鉛中毒予防規則の施行について」(昭和42年3月31日、基発第442号)(確認日 2026-10-14)。
塗膜に鉛が含まれるかを確かめる
平成26年の通知は、塗料の剥離やかき落としを請け負う事業者は、発注者に問い合わせるなどして塗料の成分を把握すること、鉛などが確認されたときは湿式による作業、作業主任者の選任、有効な保護具の着用などを行うことを求めています。発注者側には、把握している塗料の情報を施工者に伝えるよう求めています。
平成30年の通知は、鉛を含む塗料の範囲を、廃止された鉛防食塗料のJISによる鉛化合物を含む塗料、またはそれと同程度に鉛化合物を含むものとしています。たとえばJIS K 5674(鉛・クロムフリーさび止めペイント)は、塗膜中の鉛の質量分率が0.06%以下のため、含鉛塗料には当たりません。また、塗膜は何層にも重ね塗りされているのが普通なので、記録が残っていないために含有分析をするときは、鉛を含む層以外の層で濃度が薄まる分を考えて判断するとしています。
つまり、古い塗り替えの記録(以前の見積書・施工記録・塗料の缶の名前)が残っていれば業者に見せ、なければ業者がどう調べるかを聞くのが、発注者にできる確認になります。
出典: 厚生労働省「鉛中毒予防規則等の『含鉛塗料』の適用について」(平成30年7月30日、基安化発0730第1号)、前掲の平成26年通知(確認日 2026-10-14)。
契約前に業者へ聞く点
- この家の鉄部・付帯部の旧塗膜に、鉛が含まれる可能性を考えているか。考えるなら、何を根拠にしているか(築年数・過去の塗り替えの記録など)。
- 塗膜の成分を調べる場合、誰が・どの方法で調べるか。費用は見積書のどの項目に入っているか、別に請求されるか。
- ケレンはどの道具で、どう湿らせて行うか。湿式にしない場合は、その理由と代わりの粉じん対策は何か。
- 落とした塗膜くずや粉じんを、どう集めて、どう処分するか(廃棄物の処理の確認点も参照)。
- 鉛が含まれると分かったとき、工事の内容・金額・工期はどう変わるか。
見積の項目を確かめる順番は見積を受け取った後に確かめる順番に、契約前に聞く質問の全体は契約前に業者へ聞く質問リストにあります。外壁そのものの下地処理の項目は工程ごとの確認点(下地処理・下塗り・上塗り)、付帯部の見積は付帯部塗装の見積と労務単価で確認できます。
古い建材の石綿(アスベスト)については法令の型が別なので、外壁塗装の石綿事前調査で整理しています。
このページでできないこと
お宅の塗膜に鉛が含まれるかどうか、見積の鉛対応の費用が高い・安いかの判定はしません。また、この規則が個々の塗装業者や自分で塗る場合に当てはまるかも判定しません。確認した厚生労働省の通知は橋梁などを主な対象とし、住宅への当てはめは示されていないため、住宅についてはここまでの整理にとどめます。具体的な扱いは、工事を請け負う業者、労働基準監督署に確かめてください。窓口は見積に迷ったときの公的な相談窓口にもまとめています。お住まいの県の日額と参考値は都道府県別の塗装工日額ページの一覧から確認できます。
よくある質問
古い家の鉄部の塗膜に鉛が入っているかどうかは、見た目で分かりますか
見た目では分かりません。厚生労働省の通知は、塗料の成分は発注者に問い合わせるなどして把握することとし、記録が残っていないときは含有分析を行う場合があるとしています。契約前に、業者が成分をどう確かめるかを聞いてください。
鉛を含む旧塗膜を落とすとき、法令は何を求めていますか
鉛中毒予防規則第40条は、含鉛塗料を塗布した物の含鉛塗料のかき落としの業務に労働者を従事させる事業者に対し、著しく困難な場合を除いて湿式で行うこと、かき落とした含鉛塗料を速やかに取り除くことを求めています。請負人に任せる場合は、その旨を請負人に周知させる定めもあります。
見積書に鉛の対応費用が入っているかは、どう確かめますか
費用の額は法令では決まっていません。鉛の有無を調べるのか、含まれていた場合に工事の内容・金額・工期がどう変わるのかを、契約前に業者へ聞いてください。このサイトは額の目安を示しません。
