結論:金額だけでは決まらず、実質で判定される
国税庁のタックスアンサー No.1379 は、貸付けや事業に使う建物の修繕のうち、通常の維持管理や修理の支出は必要経費になる一方、使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする部分は資本的支出になると説明しています。資本的支出は、不動産所得の計算で減価償却により、数年にわたって経費にします。区別は「修繕」「改良」といった名目ではなく、実質で判定されます。
外壁塗装について国税庁の資料に個別の例示は見当たりません。そのため、あなたの工事がどちらになるかは、工事の内容と金額を見て、税理士か税務署に確かめることになります。このページは判定をせず、判定の基準と、見積の段階で確かめる点だけを示します。
国税庁の基準(個人の大家の場合:所得税基本通達)
| 基準 | 内容(原文の趣旨) | 通達 |
|---|---|---|
| 資本的支出の例 | 避難階段の取付けなど物理的に付け加えた部分、用途変更のための模様替えなど改造・改装に直接要した金額、部品を特に高い性能のものに取り替えた場合の通常の取替えを超える部分 | 37-10 |
| 修繕費に含まれる費用 | 通常の維持管理のため、または災害等で傷んだ資産の原状を回復するために要した部分 | 37-11 |
| 20万円未満・3年周期 | 一つの修理・改良等の金額が20万円に満たない場合、またはおおむね3年以内の周期で行われることが明らかな場合は、修繕費として確定申告しているときに認められる | 37-12 |
| 60万円未満・10%以下 | 資本的支出か修繕費か明らかでない金額が60万円に満たない場合、またはその資産の前年12月31日の取得価額のおおむね10%相当額以下の場合は、修繕費として認められる | 37-13 |
| 按分(30%と10%) | 明らかでない金額について、継続して「その金額の30%相当額」と「取得価額の10%相当額」の少ない方を修繕費、残りを資本的支出とする方法が認められる | 37-14 |
「一つの修理、改良等」は、同一の固定資産について行う一まとまりの工事のことです(37-12)。見積書の行ごとではなく、一まとまりの工事の合計で考えます。複数の年にわたる工事は、各年ごとの金額で見ます。
法人が建物を持つ場合は、法人税基本通達7-8-1以下に同様の定めがあり、国税庁のタックスアンサー No.5402 も同じ形で説明しています。
外壁塗装の見積で、判定に関わる点
- 塗り替えだけか、機能を足す工事か。原状の維持にあたる塗り替えと、断熱・遮熱など性能を高める塗料への変更や、用途を変える改装は、判定で別に見られる可能性があります。見積の行を分けてもらうと、あとで区分しやすくなります。
- 一まとまりの工事の合計額。外壁、屋根、鉄部、防水を同じ時期に行うと、合計が「一つの修理、改良等」の金額になるかどうかが論点になります。足場代の行も同じ工事の費用です。
- 建物の取得価額。37-13の10%の基準は、その建物の前年12月31日の取得価額が基準です。購入時の資料を手元に用意します。
- 前回の塗装からの間隔。3年周期の定めは、前回の工事の時期を書面で示せるかが前提になります。
- 修繕費にするか資本的支出にするかは申告で示す。37-12から37-14は、修繕費として所得金額を計算し、確定申告をしている場合に認めるという書き方です。
見積書を取る前に準備すること
- 工事の目的(劣化への対応か、性能を上げたいのか)を決めて、業者へ伝えます。
- 外壁、屋根、付帯部、防水を行ごとに分けた見積書にしてもらいます。内訳の見方は見積書の内訳の読み方を参照してください。
- 見積書、請求書、工事前後の写真を保存します。写真の残し方は工事写真・施工記録を契約前に確かめる点にあります。
- 見積を受け取ったら、区分は税理士か税務署に確かめます。国税庁の「税についての相談窓口」が案内されています。
この論点と、労務単価・地域係数の関係
修繕費か資本的支出かは、税務上の区分の話で、見積の金額が高いか安いかとは別の問題です。見積の人件費部分が建物のある県の水準とどう並ぶかは、地域係数を調べるページと人件費部分の2つの手順で確かめられます。賃貸向けの見積の項目の分け方は賃貸アパート・貸家の見積と国交省の2事例にあります。
よくある質問
賃貸アパートの外壁塗装は、金額が大きいと資本的支出になりますか
国税庁は、修繕費と資本的支出を名目ではなく実質で判定するとしています。金額だけでは決まらず、使用可能期間を延ばすか価値を高める部分は資本的支出になります。一方、一つの修理が20万円未満などの場合は修繕費にできる取扱いがあります。個別の判断は税理士か税務署に確かめます。
修繕費か資本的支出か分からない金額があるときは、どうなりますか
所得税基本通達37-13は、その金額が60万円に満たない場合、または前年12月31日の取得価額のおおむね10%相当額以下の場合に修繕費とすることを認めています。これらに当たらない場合は、37-14で、金額の30%相当額と取得価額の10%相当額の少ない方を修繕費とし、残りを資本的支出とする区分が継続適用で認められています。
外壁塗装の見積書を取る前に、税務のために業者へ頼めることはありますか
工事の内容が分かる行に分けた見積書にしてもらうことです。塗り替えだけの行と、機能を高める工事(断熱塗料への変更や用途の変更を伴う改装など)の行を分けて書いてもらうと、税理士が区分を判断しやすくなります。区分そのものは業者ではなく、税理士や税務署に確かめます。
出典: 国税庁タックスアンサー No.1379 修繕費とならないものの判定、所得税基本通達37-10〜37-14(資本的支出と修繕費等)、タックスアンサー No.5402(法人税)(いずれも2026-10-14確認)。表の右列の趣旨の要約と「外壁塗装で判定に関わる点」は本サイトの整理で、税務上の判断ではありません。このページでは、個別の工事の区分の判定や、業者・税理士の紹介はしません。
