景観地区の認定と届出の違い(第62条・第63条)
景観法第61条の景観地区は、市町村が都市計画で定める区域です。第62条は、景観地区内の建築物の形態意匠を、都市計画に定められた制限に適合させるよう求めています。第63条第1項は、景観地区内で建築物の建築等をしようとする者に、あらかじめ申請書を出して市町村長の認定を受けることを求めています。
ここでいう建築等は、第16条第1項第1号で「建築物の新築、増築、改築若しくは移転、外観を変更することとなる修繕若しくは模様替又は色彩の変更」と定義されています。外壁の塗り替えは、色彩の変更や外観を変更することとなる修繕にあたる場合があります。出典: e-Gov法令検索「景観法」第16条・第62条・第63条(確認日 2026-10-20)。
認定から着工までの流れ(第63条第2項・第4項)
- 市町村長は、申請書を受理した日から30日以内に、計画が第62条の制限に適合するかを審査し、適合すると認めたときは認定証を交付します(第2項)。
- 適合しないと認めたとき、または適合するかを決められない正当な理由があるときは、その旨と理由を書いた通知書を、同じ30日以内に交付します(第3項)。
- 認定証の交付を受けた後でなければ、建築等の工事はできません(第4項)。塗装の着工日は、この審査期間を見込んで決めます。
- 工事の施工者は、工事現場の見やすい場所に、認定があった旨と建築等工事主・設計者・工事施工者・現場管理者の氏名または名称を表示し、認定を受けた計画の写しを現場に備えます(第68条)。
制限に違反した建築物には、市町村長が工事の施工停止や、色彩の変更を含む是正の措置を命じることができます。命令の相手には、建築等工事主のほか、工事の請負人(下請人を含む)や現場管理者も含まれます(第64条第1項)。契約前に、認定の要否と取得の担当を業者と決めておく理由です。
景観計画区域の届出との違い
| 項目 | 景観地区の認定 | 景観計画区域の届出 |
|---|---|---|
| 根拠 | 景観法第62条・第63条 | 景観法第16条 |
| 手続きの性質 | 制限に適合するかの審査を受け、認定証を得る | 行為の内容を事前に知らせる。制限に適合しないときは勧告がある |
| 着工できる時期 | 認定証の交付後(第63条第4項) | 受理から30日を経過した後(第18条第1項) |
| 審査の期間 | 受理から30日以内(第63条第2項) | 勧告は届出から30日以内(第16条第4項) |
景観地区内で行う建築物の建築等には、第16条の届出は適用されません(第16条第7項第8号)。同じ塗り替えで、認定と届出の両方を出す必要はありません。景観計画区域の届出は外壁塗装の景観計画区域の届出で整理しています。
景観地区の認定の規定(第62条から第68条まで)は、景観重要建造物に指定された建築物、文化財保護法で国宝や重要文化財などに指定された建築物、伝統的建造物群保存地区内の建築物には適用されません(第69条)。景観重要建造物は外壁塗装の景観重要建造物の許可、伝建地区は外壁塗装の伝建地区の許可にあります。
自治体の案内の例(同じ色の塗り替えの扱いが違う)
| 自治体 | 対象の区域 | 同じ色・同系色の塗り替え | 手続き |
|---|---|---|---|
| 神奈川県鎌倉市 | 鎌倉駅・北鎌倉駅周辺の市街地。屋根・外壁の色彩等の制限を定めている | 同系色であっても認定申請が原則必要 | 申請書・図面等・建築等計画概要書を提出。受理後30日以内に審査し、認定証の交付まで着手できない。立面図には素材と色彩(マンセル表色系と色味)を記載し、着色する |
| 岩手県盛岡市(大慈寺地区) | 大慈寺地区の景観地区 | 既存と同じ色彩に復元する場合は、既存不適格を除き認定申請は不要。既存と同じ色彩とは新築時または経年で変化した現時点の色彩 | 既存不適格の物件は、現時点の景観地区に定める色彩での申請が必要 |
出典: 鎌倉市「景観地区内において建築物の建築等を行う場合は、認定申請が必要です」(PDF)、盛岡市「景観計画区域内行為届及び大慈寺地区景観地区認定申請の「外観の変更」に関する運用基準について」(PDF)(いずれも確認日 2026-10-20)。区域の範囲、色彩の基準、同じ色の扱い、除外の範囲は自治体ごとに違い、上の2市の扱いは他の自治体には当てはまりません。
確かめる順番
- 家のある市区町村の景観担当課のページや窓口で、自宅が景観地区に入っているかを確かめます。「市区町村名+景観地区」で探すと公式の案内が出ます。
- 景観地区内なら、塗り替え(同じ色を含む)に認定申請が要るか、使える色の基準、必要な図面を聞きます。
- 認定申請を誰が出すか、審査の期間を日程にどう入れるかを業者に聞き、見積や契約書の工期へ反映します。聞く言葉は契約前に業者へ聞く質問リストにあります。
- 景観地区に入っていなければ、外壁塗装の景観計画区域の届出、外壁塗装の風致地区の許可、外壁塗装の地区計画の届出、外壁塗装と建築協定のうち、該当しうる制度を窓口で確かめます。
このページでできないこと
このページは条文と公式案内の紹介にとどまります。お住まいの建物が対象かどうかの判定、個別の見積が適正かどうかの判定、塗装業者の紹介はしません。お住まいの県の塗装工日額は都道府県別の塗装工日額ページの一覧から確認できます。
よくある質問
景観地区で外壁を同じ色に塗り替えるときも、認定は必要ですか
景観法第16条第1項第1号は色彩の変更を建築等に含めています。鎌倉市の案内は、同系色であっても認定申請が原則必要としています。一方、盛岡市の大慈寺地区では、既存不適格を除き、既存と同じ色彩に復元する場合は認定申請が不要です。自治体ごとに違うため、窓口で確認します。
認定を受けるまでに、どのくらいかかりますか
景観法第63条第2項は、市町村長が申請書を受理した日から30日以内に審査することを定めています。認定証の交付を受けた後でなければ工事はできません(第4項)。鎌倉市の案内も、受理後30日以内の審査と、認定証の交付までは着手できないことを示しています。
景観地区と景観計画区域は、同じものですか
違います。景観計画区域では第16条の届出と、基準に適合しないときの勧告が中心です。景観地区は都市計画で定める区域で、第63条の認定を受けないと工事ができません。景観地区内の建築等には、第16条の届出は適用されません(第16条第7項第8号)。
