この約款は何か(令和7年12月に改正)
民間建設工事標準請負契約約款は、中央建設業審議会が定めた民間工事の標準の契約書と約款で、(甲)と(乙)があります。国土交通省は、令和7年12月2日にこの(甲)(乙)を改正し、改正部分を令和7年12月12日から施行しています。国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインは、民間工事では標準約款、またはこれに沿った内容の約款による契約を基本としています。
外壁塗装の契約書が、この約款を使っているとは限りません。業者が独自の約款や注文書・請書だけで契約することもあります。このページは、標準約款に何が書かれているかを知り、手元の契約書を読むときの比べる材料にするためのものです。手元の契約書が標準約款と一致しているか、内容が適切かは判定しません。
知りたい場面と条項の対応表
| 知りたいこと | 約款(乙)の条項 | 書かれていること |
|---|---|---|
| 請負代金内訳書に何が書かれるか | 第2条 | 契約後に速やかに請負代金内訳書と工程表を提出します。内訳書には、材料費、労務費、法定福利費、安全衛生経費、建設業退職金共済の掛金を明示するとされています |
| 代金をいつ払うか | 契約書の「支払方法」欄、第18条 | 契約成立のとき・部分払・完成引渡しのときの割合を契約書に書きます。完成後の検査に合格したとき、引渡しと同時に支払いを完了します |
| 追加工事や変更で代金が変わるとき | 第22条 | 工事の追加・変更や工期の変更などがあったとき、理由を明示して請負代金額の変更を求められます |
| 工事後の不具合 | 第23条 | 契約不適合のとき、書面で補修などの追完を請求できます。追完がないときは代金の減額を請求できます |
| 業者と折り合えないとき | 第36条 | 調停人または建設工事紛争審査会のあっせん・調停で解決を図ります |
条番号は、国土交通省が公表している改正の新旧対照表と、令和元年12月の改正の本文で確かめたものです。契約書に付いた約款は、条番号が違う、条項が省かれている、特約が足されているといったことがあるため、手元の書面の条番号で読み替えてください。
請負代金内訳書と労務費(第2条・第2条の2)
第2条は、受注者が契約を締結した後、速やかに請負代金内訳書と工程表を発注者へ出すと定めています。令和7年12月の改正後の第2項は、内訳書に材料費、労務費、法定福利費(健康保険料などの事業主負担額)、安全衛生経費、建設業退職金共済の掛金を明示するとしています。
改正後は、第2条の2(適正な労務費の確保等)が新設されました。(A)(B)の2つの型があり、どちらかを選んで使う形です。(A)では、発注者と受注者が、内訳書に明示された労務費が、中央建設業審議会が勧告する「労務費に関する基準」を踏まえた適正な労務費であることを確認するとされています。
労務費に関する基準と見積の関係は労務費に関する基準と見積で、見積書の内訳の見方は外壁塗装の見積書の内訳の見方で整理しています。県ごとの塗装工日額は地域係数を調べるで確かめられます。
支払いの時期と部分払(契約書の支払方法欄・第18条)
- 契約書の様式には「支払方法」の欄があり、「この契約成立のとき ○割」「部分払 第一回 ○割 第二回 ○割」「完成引渡しのとき」という形で割合を書きます。注には、一割・三割・三割・三割のような記入例があります。
- 第18条第1項は、契約書の定めにより受注者が部分払や中間前払を求めるとき、監理者の承認を得て、請求書を支払日の5日前に発注者へ出すとしています。
- 第18条第2項は、工事完成後に検査に合格したとき、発注者は契約の目的物の引渡しを受けると同時に、請負代金の支払いを完了するとしています。
外壁塗装の手付金・前払い・支払時期の考え方は外壁塗装の手付金・前払い・支払時期で整理しています。標準約款の割合の記入例は例であり、外壁塗装の支払割合の目安を示すものではありません。
追加・変更があったときの代金(第22条)
第22条は、発注者または受注者が、次のようなときに、相手方へ理由を明示して請負代金額の変更を求められるとしています。
- 工事の追加または変更があったとき
- 工期の変更があったとき
- 契約期間内に予期できない法令の制定・改廃や経済事情の激変などで、請負代金額が明らかに適当でないと認められるとき
- 中止した工事や災害を受けた工事を続行する場合に、請負代金額が明らかに適当でないと認められるとき
請負代金額を変更するときは、原則として、工事の減る部分は確認を受けた請負代金内訳書の単価で、増える部分は時価によるとされています。令和7年12月の改正後は、資材の価格の高騰も変更を求められる事由の型(B)に加わり、変更を求めた者が協議を申し出られる項も入りました。追加工事の見積の見方は追加工事の見積の見方にあります。
工事後の不具合と契約不適合責任(第23条)
第23条は、引き渡された工事目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しないとき、発注者は受注者へ書面で、目的物の修補または代替物の引渡しによる履行の追完を請求できるとしています。追完に過分の費用がかかるときは請求できません。
発注者が相当の期間を定めて書面で追完を催告し、その期間内に追完がないときは、不適合の程度に応じて書面で代金の減額を請求できます。追完が不能なときなどは、催告なしで直ちに減額を請求できます。
民法の通知期間と、業者の保証書との関係は外壁塗装の契約不適合責任で整理しています。このページの条項は標準約款の定めで、手元の契約書の期間や免責の内容は書面ごとに違います。
業者と折り合えないとき(第36条)
第36条は、発注者と受注者の間に紛争が生じたときの解決の方法です。2つの型があります。
- (A)調停人を決める型: 契約書に書いた調停人に解決を依頼するか、建設業法による建設工事紛争審査会のあっせんまたは調停で解決を図ります。
- (B)調停人を決めない型: 審査会のあっせんまたは調停で解決を図ります。
どちらの型でも、解決の見込みがないと認めたときや、審査会があっせん・調停をしないとき、または打ち切ったときは、仲裁合意書に基づいて審査会の仲裁に付すことができます。審査会の管轄について特別の合意がないときは、建設業法第25条の9第1項または第2項に定める審査会が管轄です。審査会の対象と手続は「建設工事紛争審査会は外壁塗装の不具合・代金の争いに使えるか」で整理しています。
手元の契約書を読むときの使い方
- 契約書に「民間建設工事標準請負契約約款」などの名前があるかを見ます。ない場合は、約款が別紙にあるか、そもそも約款が無いかを業者に確かめます。
- 上の対応表の5つの場面(内訳書・支払い・変更・不具合・紛争)について、手元の契約書のどこに書いてあるかを探します。書いていない場面は、契約前に業者へ聞く質問になります。
- 契約書に書く事項の全体は外壁塗装の契約書に書く事項で確かめられます。
このページでできないこと
本サイトは、標準約款の公式な本文を整理するだけです。手元の契約書が標準約款と一致するか、契約書の内容が適切か、業者の請求が正しいかは判定しません。個別の見積の適正・不適正の判定、塗装業者の紹介・あっせんもしません。条文の細かな要件は、国土交通省が公表している約款の原文で確かめてください。
よくある質問
民間建設工事標準請負契約約款(乙)とは何ですか
中央建設業審議会が決めた、民間の建設工事の請負契約に使う標準の約款のひとつです(甲と乙があります)。国土交通省は、建設業法令遵守ガイドラインで、民間工事は標準約款またはそれに沿った内容の約款による契約を基本としています。令和7年12月2日に改正され、改正部分は令和7年12月12日に施行されています。外壁塗装の契約書が必ずこの約款を使っているとは限りません。
約款(乙)では、請負代金の支払いはいつですか
支払方法は契約書に書く欄があり、約款の例では「この契約成立のとき○割、部分払の第一回○割、第二回○割、完成引渡しのとき○割」の形で割合を書く注があります。第18条は、工事完成後に検査に合格したとき、発注者は契約の目的物の引渡しを受けると同時に請負代金の支払いを完了する、と定めています。部分払や中間前払を求めるときは、請求書を支払日の5日前に出すと書かれています。
追加工事で代金が変わるときは、約款(乙)ではどう書かれていますか
第22条は、工事の追加または変更があったとき、工期の変更があったときなどに、発注者または受注者が相手方へ理由を明示して請負代金額の変更を求められると定めています。変更するときは、原則として、減る部分は確認を受けた請負代金内訳書の単価で、増える部分は時価によるとされています。
工事後に不具合があったときの条項はどこですか
第23条(契約不適合責任)です。引き渡された工事目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しないとき、発注者は書面で、修補または代替物の引渡しによる追完を請求できます。相当の期間を定めて追完を催告しても追完がないときは、書面で代金の減額を請求できます。通知の期間など、ほかの項は約款の原文で確かめてください。
業者と争いになったときの条項はどこですか
第36条(紛争の解決)です。発注者と受注者の間に紛争が生じたときは、契約書に記載の調停人に解決を依頼するか、建設業法による建設工事紛争審査会のあっせんまたは調停で解決を図ります。調停人を決めない型もあります。解決の見込みがないときは、仲裁合意書に基づいて審査会の仲裁に付すことができます。
出典: 国土交通省「建設工事標準請負契約約款」のページ掲載の「民間建設工事標準請負契約約款(乙)(令和7年12月2日改正)」の新旧対照表、「民間建設工事標準請負契約約款(甲)・(乙)の実施について(令和7年12月2日国土交通省中建審第4号)」、「民間建設工事標準請負契約約款(乙)(令和元年12月13日改正)」(mlit.go.jp)。確認日は2026-10-16です。
